雨の日の大人たちは

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(書評)ミステリー×ゾ○ビの異色作「屍人荘の殺人」(著者:今村 晶弘)

 ミステリー×ゾ○ビの新境地ジャンル小説。

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Ⅰ.あらすじ

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子とペンション紫湛荘を訪れる。しかし想像だにしなかった事態に見舞われ、一同は籠城を余儀なくされた。緊張と混乱の夜が明け、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。それは連続殺人の幕開けだった!奇想と謎解きの驚異の融合。衝撃のデビュー作!(AMAZONより引用)

 

Ⅱ.ミステリー賞総なめの話題作

 今回レビューするのは、先日神木隆之介主演で映画化された異色ミステリー「屍人荘の殺人」です。

 2018年には「このミステリーがすごい!」「週間文春ミステリーベスト10」「本格ミステリベスト10」等、主要ミステリー賞を総なめにしたのも記憶に新しいのではないでしょうか。

 

Ⅲ.ゾ○ビとミステリーの融合

 はい、ここからネタバレです。

 この作品のあらすじを読んで「想像だにしなかった事態」は何なのか、と思う方が多いのではないでしょうか。

 想像だにしなかった事態ーー そう、本作は本格ミステリとゾンビを融合させた異色作なのです。

 まさかゾンビとミステリが・・・、そんなファンタジー溢れる作品が本格ミステリと呼べるのか? と思われる方もいるかもしれません。が、ファンタジーとミステリは融合しうるのは他の作品でも実証済みです(例:折れた竜骨)。

amenoh.hatenadiary.jp

  まぁ、ミステリから見ればゾンビというのは異色に思えますが、ゾンビから見たらミステリというのは別に不思議ではありません。

 最近はゾンビも色んなジャンルに進出してますからね。

 コメディは「ショーンオブザデッド」「ロンドンゾンビ紀行」に始まり、恋愛ものだと「ウォームボディ」、アクションなら「ワールドウォーZ」・・・。新しいジャンルを次々と捕食していくゾンビにとって、ミステリに到達するのはもはや必然だったのかもしれません。

 

Ⅳ.ゾンビをミステリの要素として用いる

 本作で面白いのは、ゾンビをミステリの「道具」として何重にも用いていることでしょう。

 今ではもはや作り出すのが難しいクローズドサークルというシチュエーションや、犯人が用いるトリック、シーンの展開等ゾンビが至る所で活用されています。ゾンビは環境であり、凶器であり、そして殺害方法の理由にもなったりします。

 これがとても面白いのです。

 中途半端にゾンビを使う程度であれば、おそらく本作は日の目を浴びなかったでしょう。ゾンビを120%活用したからこそ、逆にゾンビと本格ミステリの両立ができていると感じます。

 最後の謎解きのシーンでは、その活用されっぷりに、きっと驚くこと間違いないでしょう。まぁちょっとは「そりゃないだろ」と思う様な件もありますが、ご愛嬌という範囲内に収まっていると思います。

 

Ⅴ.万人に受ける本格ミステリ

 本作、良くも悪くもライトな作品です。

 ネットのレビューを見ると、様々な賞を受賞した割には本作を非難する意見が散見されます。確かに、有栖川有栖や綾辻行人の様な完成度の高いミステリ作品ではないでしょう。

 しかしながら、この「ミステリー×ゾンビ」というのは、有栖川有栖の「月光ゲーム」で描いた「ミステリー×サバイバル」と同じくらい「そうきたか!」と読者に思わせるインパクトのある作品だと思います。

 本格ミステリを好きな方も、あまり読んだことない方も、両方にお勧めできる良著ではないでしょうか。

(100書評チャレンジ:46/100冊)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者:今村 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/11
  • メディア: 文庫