雨の日の大人たちは

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(書評)5作のどんでん返しストーリー「儚い羊たちの祝宴」(著者:米澤 穂信)

 米澤穂信流のどんでん返し小説。

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Ⅰ.あらすじ

ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。(BOOKデータベースより)

 

Ⅱ.ブラックさ溢れるどんでん返し小説

 米澤穂信といえば、「氷菓」だろう。

 アニメ化や実写映画化もされた本作は、学校を舞台にしたミステリとして評価が高い。とはいえ、密室ゲームを舞台とした「インシテミル」や、パラレルワールドを取り扱った「ボトルネック」、中世魔法世界を舞台とした「折れた竜骨」等、幅広いジャンルを描いており、一つの色に染まらない米澤の力量をうかがわせる。

amenoh.hatenadiary.jp

 

 本作は昨今一つのジャンルとして認識されている「どんでん返しモノ」の、米澤穂信バージョンである。

 

Ⅲ.5作の女性を主人公とした連作

 ストーリーは「バベルの会」というキーワードで繋がった女性を主人公として進行する。とはいえ、この「バベルの会」というのが直接的に影響するのは最終話のみであり、他はそこまで気にせず独立した短編として楽しむことができるだろう。

 どの話も起承転結の「結」が「どんでん返し」になっているのが本作の特徴であり、ミソとなっている。「儚い羊」として登場する女性たちの、内面的な感情の揺らぎや狂気を、「どんでん返し」という方法で効果的に描いている。

 

Ⅳ.面白い話と、そうでない話

 5作もあるので当たり外れが有るのは常。

 最も面白かったのは、2本目の「北の館の罪人」。ネタバレが過ぎるかもしれませんが、この話に関しは「どんでん返し」をラスト一行で更に返している。また青い絵をテーマとした「罪人」の話はとても面白い。

 次が1本目の「身内に不幸がありまして」。有る意味で、落語のようなオチが終わりに用意されている。こういうオチを用意するのに、米澤穂信らしさを感じる。

 「玉野五十鈴の誉れ」「儚い羊たちの晩餐」はオチはあるものの、全体的に流れが読みやすく、「どんでん返しモノ」として弱い。

 「山荘秘聞」は、これオチなの? という感じ。どことなく、映画のミザリーっぽさを感じる。

 

Ⅴ.総評

 本を出せば何かしらの賞を取る米澤穂信ですが、本作は「このミス」の17位を取ったのみと、一時期ブームになった満願と比べて評価が低い。

 「北の館の罪人」「身内に不幸がありまして」は星4つ、「玉野五十鈴の誉れ」「儚い羊たちの晩餐」は星3つ、「山荘秘聞」は星2つといったところ。

 全体としては星3という感じだろうか。

 (100書評チャレンジ:33/100冊)

 

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)