雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

(書評)ラスト1行が秀逸である「噂」(著者:荻原 浩)

 「衝撃のラスト1行」系で、はじめて本当に衝撃だったかも。

f:id:amenoh:20190120222427j:plain

 Ⅰ.あらすじ

「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。

 

Ⅱ.ルーズソックスの時代

 この本は随分と昔の作品です。

 どれくらい昔かというと、初版が発行されたのが2001年。もう18年も前の作品になります。作中ではiモードやプリクラ、ルーズソックスなんていう懐かしい単語が並びます。

 さて、そんな本作ですがテーマはタイトルにある通り「噂」。

 販促のために流された噂が、いつのまにか本当の殺人事件に発展、はたして犯人はだれなのかーー という、都市伝説の様なストーリーとなります。

 

Ⅲ.全体的なテーマの入れ方が秀逸

 全体的なストーリー自体は、17年も経った今もはやテンプレート的になっており、取り立てて衝撃的なものではありません。犯人の犯行自体も、昔はセンセーショナルだったのかもしれませんが、サイコサスペンス溢れる現代においては、とりたてて斬新というわけでは無いですね。

 秀逸なのはストーリーの中に挟み込む「噂」の有効活用ですね。まだインターネットの普及しきっていない世の中で、「噂」という形で広がる情報を、多方面から活用しているのが本作です。

 商業的な意味で「噂」を重視する社長なんかは面白いですね。実際、今の世の中はレビューサイトや購入サイトの「口コミ」により、商品の売上げが左右される世の中になっています。2001年も2019年も、本質としては何も変わっていないのが興味深いです。

 

Ⅳ.衝撃のラスト1行

 この本を手にとって気になるのが、帯にある「衝撃のラスト1行」という文面。大抵の場合、こういう文面って変に期待するから、あまり衝撃を受けないんですよね。

 ただ今回の1行はグっと来ました。いや、まったく予測していない所からの変化球でしたから。他のレビューでは、「それまでの伏線が無い」等批判されたりもしますが、いやいやどうして、それを差し引いても良いラスト1行だと思います。

 個人的には同じくラスト1行で有名な「イニシエーション・ラブ」よりも、こっちの方が良い演出していると思います。

amenoh.hatenadiary.jp

 イニシエーションラブはラスト1行が話の「オチ」に繋がりますが、この作品の場合は最後の1行が作品の本質につながっている形ですね。

 

Ⅴ.多くの方にオススメしたい一作

 ちょっと時代背景が古い、ということはありますが、それを差し引いても読みやすく、かつラスト1行のインパクトも強い良著だと思います。こういう「衝撃のラスト1行」系が好きな人には必読の一冊といって良いでしょう。

 久々に星5つをつけたい、万人にオススメできる1冊でした。

(100書評チャレンジ:31/100冊)

 

噂 (新潮文庫)

噂 (新潮文庫)