雨の日の大人たちは

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(書評)うーん、結末が難しい「夜は一緒に散歩しよ」レビューと考察

 結末を読み解くのがすっごく難しい。

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 Ⅰ.あらすじ

作家の横田卓郎は妻を亡くし、娘の千秋と二人で暮らしていた。妻の死後、千秋は奇妙な絵を描くようになる……。人ではない異形のものを。ある日をきっかけに「青い顔の女」ばかりを描くようになった千秋は、その絵を「ママ」と呼び、絵を描くことに執着する。そしてもうひとつ執着すること。それは、夜の散歩だった。第1回『幽』怪談文学賞大賞受賞作。解説は京極夏彦氏。

 

Ⅱ.ホラーはやっぱり、締め括りが重要だよね

 第1回『幽』怪談文学賞大賞を受賞した作品。あまり聞いたことがないと思ったら、どうもこの賞既に無くなっているんだとか…。

 内容としては、主人公の卓郎が娘である千秋を中心に起こる怪異に巻き込まれていく、というもの。怪異の力は結構強く、主人公の周辺人物どころか、その街の住人までもが歯牙にかけられていく。思った以上に、結構バンバン人が死んでいく。それに対して、こちらには寺生まれのTさんが存在しない。詰まる所、怪異vs主人公という、圧倒的にパワーバランスが怪異に傾いたストーリーだ。

 私としては、個人的に怪異は強いほうが好きなので系統的には好みの部類。しかし、私はこの作品をあまり評価できない。というのも、この話、結末を紐解くのが非常に難解であるからである。

 

Ⅲ.ネタバレと考察

 さてさて、ここからネタばれと考察。

 最終的に怪異の原因である「摩耶美」を打ち負かした主人公・卓郎と、再婚相手の美樹であるが、最後に意味深な言葉を残します。内容は伏せますが、まぁこういうお話の場合「美樹が摩耶美にとりついた」というのが正解の解釈でしょう。解決したと思ったら、結局は絶望のエンドという、割とホラーにありがちなエンドです。

 しかし、この結末が非常に分かり難い。というか、色々な情報が投げっぱなしジャーマンで存在するので収集が全くついていない。

 

①何故娘・千秋は指輪をはめた人=母親と認識するのか

 単純にこれが分かりません。最後まで何故そう認識するのかも明言されていません。もしかしたら、幼稚園の先生の里中の言う通りアスペルガーなのかもしれません。このストーリーが、何故「青い顔の女性」「母親」と認識するのかにおいて「指輪をはめているから」という理由があるのですが、この理由がイマイチ機能していないのでモヤっとした感じになります。

 

②何故無関係な人が殺されるのか

 「摩耶美」の目的は、卓郎と家族になることのはずなのですが、それとは無関係な人がバンバン死にます。それこそ、ホームレスなんかが死んでいきます。何故無関係な人が殺されるのか、明確な説明がありません。

 

③楠木の相談相手の「占い師」とは

 元編集者・楠木の相談相手の「占い師」とは誰なのか。まぁ十中八九「摩耶美」でしょう。しかし、摩耶美は死んでいるのに、何故楠木は死者に相談することができるのでしょうか。登場したときは、非常識な人ではあるものの基地外さんでは無かったはずなのですが。そして、彼が最後に行いたかったことは何なのでしょう。行動が全く分からないのですが。

 

 等々…、上がれば他にもあるのですが、代表的なのはこの三つでしょうか。私の読解力が低いからかもしれませんが、全部投げっぱなしです。ということで、考察しようにもどうにも出来ない。まぁ小池真理子の「墓地を見下ろす家」も投げっぱなしジャーマンだから…、と言えなくもないが、ちょっと酷い。

amenoh.hatenadiary.jp

 

Ⅳ.評価

 理由づけが欲しいなら、ホラーじゃなくてミステリ読めよ! と言われるかもしれませんが、今日日のホラーだって張られた伏線くらいは回収しますので、投げっぱなしジャーマンはホント駄目ですよ。萎えるので。

(100書評チャレンジ:19/100冊)

 

夜は一緒に散歩しよ<夜は一緒に散歩しよ> (MF文庫ダ・ヴィンチ)

夜は一緒に散歩しよ<夜は一緒に散歩しよ> (MF文庫ダ・ヴィンチ)