前回
Ⅱ.カラスミ屋
皆さんはカラスミお好きでしょうか。日本では高級食材としてお馴染みのカラスミですが、トルコでは日本に比べて比較的安価に購入することができます。それを知ってか日本人をターゲットにしたカラスミ屋さんが、グランバザールや旧市街にあったりするのです。
私がトルコについて1日目、にっちもさっちも分からずに旧市街を歩いていると、ふと目に飛び込んできたのがこのお店でした。
からすみ専門店。
いきなりの日本語です。あまりの衝撃にお店に入ってみると、中はトルコのお菓子やナッツを専門に扱うお土産屋さんのよう。何でこんなお店の前に「からすみ」なんてのぼりが出てるんだ? と思っていると、店長らしき人間が近寄ってきます。
店長「貴方日本人?」
雨男「そうですよ」
店長「カラスミ好き? トルコはカラスミ安いんだよ~ 知ってた?」
雨男「は、はぁ…」
店長さん、日本語ぺらぺらです。
店長「このお店怪しいお店じゃないから。その証拠にほら、日本の有名人いっぱいきてるよー」
そういって写真を出してくるのですが、確かにテレビで見たタレントの写真が沢山出てきました。流石に誰が出てきたかまではあまり記憶にないのですが、道端ジェシカかアンジェリカのどちらかが映っていた記憶があります。
店長「むっちゃ安いから食べてってや、ちょっと用意するから待っててね」
と買わせる気満々で準備を始める店長。困ったな、一日目からこんな調子だと先が思いやられると思っていると、一人の日本人男性が店内に入ってきます。からすみ目当てに入ってきたのかな、と思っていると店長の方へ向かっていきます。
男性「いやー店長さん、参ったよ」
店長「あれー○○さん、どうしたの?」
何か二人は知り合いの模様。
男性「ぼったくり! 20万もってかれちゃったわ」
なに、ぼったくり?
男性「昨日暇だからその辺り歩いてたら男が声掛けてきてさ、ちょっと飲みに行かないかって誘われて女の子のいるお店で飲んだら、ひっかかっちゃった」
店長「もしかしてカタールの人?」
男性「いや、ドバイの人。建築関連の仕事してるとか言ってたかな。同じく一人旅してて人寂しいから飲みに行こうって話になって。女のいる店に連れていかれてさー。黒服いっぱい出てきて困ったよ」
店長「それは災難だったね~」
と、店長とその男性が話し込み始めたので、僕は適当に理由を付けて(また今度来るね、とかだった気が)お店を後にしました。その時は「へートルコにもぼったくりバーとかあるんだぁ」と思うだけでした。
雨男(ドバイってUAEだっけ。まぁ出会うこともないだろうな)
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そんな1日目の記憶がフラッシュバックされます。UAE、建築関連、飲み、旧市街――
そう、間違いない。間違いなく私は、その男と今同じタクシーに乗っているのである。
私の鈍臭い直感が緊急警報をけたたましく鳴らし始めました。ヤバイ…、これは間違いなくぼったくりバーや! と。
(次に続く)