私が選ぶベスト映画No.1の原作です。
Ⅰ.あらすじ
人は理性の許容範囲を越えた出来事に直面したとき、どのように行動するのか?突如、身の毛もよだつ奇怪な生き物が跳梁をはじめたメイン州のある田舎町。住み慣れた町が異形の世界へと変化したとき人々は…本アンソロジー最大のボリュームで描くスティーヴン・キングをはじめ、デニス・エチスン、リサ・タトルらの名匠が築き上げる、おぞましくも魅惑的な異形のモニュメント。恐怖に痺れること必至の五篇の物語を収録。
Ⅱ.やっぱり霧は名作だ
名匠の傑作短編集という位置づけですが、その大半はスティーブンキングの「霧」です。私が最も好きな映画「ミスト」の原作であり、キングの短編の中でも評価の高い一作です。閉ざされた環境下で極限の恐怖にさらされたとき、人々はどういった行動に出るのか、というのが主題となっています。ある人は現実を否定し、ある人は神の審判だと人々に説き、ある人は死を選びます。その中で決してあきらめない、投げ出さない主人公らを描いています。
Ⅲ.映画よりも綿密な人間描写
映画版「ミスト」はこの原作を最大限生かしたうえで、ラストに衝撃の独自解釈を加えています。それに関してネット上では賛否両論があふれ、それが本作品の評価を引き上げていると思います。しかしながらこと人物描写・精神描写に関してはやはり小説のほうがきめ細かいと感じます。映画では群衆の一人でしかなかったキャラクターも、小説内ではしっかりとした一人格をもったキャラクターとして描かれています。映画では理性的で知的な印象を受ける主人公ですが、小説では若干粗暴な印象を受けることになります。しかしそれが却って、極限下に置かれた主人公たちの心情をうまく表わせているように感じます。
Ⅳ.映画が先か、小説が先か
私は映画から入ってしまいましたが、出来るのであれば小説から入り映画を見たほうが面白いかと思います。映画では脇役でしかないキャラクターにも目が行くことになるでしょうし、何せ映画のラストに一層の衝撃を受けることができるでしょう。長さも中編程度ですので、1時間ちょっとで読めてしまいます。
最近はグリーンマイル何かで感動系も手掛けるキングですが、やはり彼の新境地はホラーサスペンスであることを実感できる一作です。
評価:★★★★☆
(100書評チャレンジ:11/100冊)