秋の夜長というよりも、もはや冬の気圧配置に突入して参りました。背筋がゾッとするような恐怖も良いですが、読後に何者かの気配を感じる、そんなホラーは如何でしょうか。
第6回日本ホラー大賞受賞作。
Ⅰ.読ませる文章
作者は岩井志麻子さんという女性の方なのですが、いやはやホラー小説作家なのにどうして、文章が純文学並みに洗練されています。
本書は4編の短編小説で構成されており、全て岡山を舞台にした作品となっています。また、若干各話がリンクしているかのように思える描写がもあるため、一連のシリーズと捉えても良いでしょう。
ホラー小説大賞受賞作となった「ぼっけえ、きょうてえ」は女郎の独白形式で進む物語となっています。岡山の方言で進む独白は、標準語では出せない独特の恐怖感と、ねっとりとした感情を読者に提起させます。いつの間にか闇夜に揺れる灯のような情景に心を絡め取られ、本当に遊郭の一室にいるかのような錯覚を覚えます。こういう文章は男性には書けません。そういった類のドロドロと、ねっとりとした感情を感じ取ることができます。
個人的に一番好きな話は「依って件の如し」。4編中最後の作品なのですが、明治時代の農村を舞台とした作品です。好きな人には好きなシチュエーションですが、村八分、忌地、謎の風習等堪らないフレーズが飛び出してきます。大賞作品にも勝るとも劣らない出来栄えですので、合わせて読みたいですね。
Ⅱ.評価
ホラー小説大賞4作目のご紹介でしたが、どれもこれも毛色の違う作品ばかりです。ホラーって色々なジャンル、表現があるのだと感じます。
ご紹介した中では、一番ジャパニーズホラーに近い作風と言えるでしょう。オーソドックスといえば、オーソドックスなホラー作品かも。牛家とかかにみそがイレギュラー過ぎたのかもしれません。因みに海外ドラマにて映像化されており、カルト的な人気作品になっているんだとか。
ホラー作品は短編が多いので、会社から帰ってサクッと読めるのが良いですね。ブックオフで恐らく100円で買える作品。本棚に置いておいても、損はないかと。
評価:★★★☆☆
(100書評チャレンジ:3/100冊)

- 作者: 岩井志麻子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る