雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

東京都美術館の「モネ展」に行ったら、想定以上に素晴らしかった

 三連休の初日ということで、先日記事で紹介しました「マルモッテン・モネ展」に足を運んでみました。結果、考えていた以上に素晴らしい作品に出合うことが出来ました。

amenoh.hatenadiary.jp

 

 Ⅰ.実際のモネの作品は半分程度

 まず展示内容に関してですが、90点の内実際のモネの作品は半分程度です。残りは同時代の印象派作家の作品、ウジェーヌ・ブータンやルノワールの作品となっています。内容に関してはモネ自身や親族の肖像画の他、小さなスケッチ程度の作品が多く、まぁ作品数の水増し的な意味合いが強いものであると思います。

 また一つ残念であったのが、目玉である作品の「印象 日の出」と「サン=ラザール駅」はそれぞれ別日程での展示であるということです。印象日の出は10月18日迄、「サン=ラザール駅」は20日以降の展示となります。私は「印象、日の出」の方が見たかったので良かったのですが、もし「サン=ラザール駅」が目当てなら20日以降となりますのでお気を付けください。また、「印象、日の出」目当てならそろそろタイムリミットが近づいていますのでお早めに!

 

Ⅱ.モネ初期の作品から晩年の作品まで幅広くラインナップ

 本企画展では、モネの最初期の作品から最晩年の作品まで幅広い作品を掲載しています。最初期というのは、モネが学生時代小遣い稼ぎに書いた政治家の風刺画に始まり、最晩年はバラの小道迄モネ生涯の作品を広く集めています。

 

Ⅲ.見どころはやはり「印象、日の出」

 色々な作品が展示されているのですが、やはり見どころは「印象、日の出」でしょう。

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 晩年の「バラの小道」もその多彩な色彩と木漏れ日に圧巻されますが、「印象、日の出」の存在感は群を抜きます。やはりというか当たり前のことですが、PCや本で見る絵と、実際のカンヴァスに描かれた絵ではその本質が全く違います。PCでは平面的に見えた海面に映る朝日が、実際のカンヴァスでは実に淡く、朝霧に霞む港がすぐそこに、例えば窓の外にあるかのように描き出しています。港町に深く立ち込める朝霧が、これから活気づく街を静かに柔らかく包み込む様子は、写実的ではないからこそ人々に「印象」として深く刻まれていきます。

 印象は目玉コーナーでお馴染みの「一列に並んで立ち止まらずにご鑑賞下さい」コーナーとなっているのですが、この作品に限ってはその列に並ぶ必要はありません。この絵のベストな鑑賞位置はその列から2メートル程度離れた場所となるので、歩くコーナーでは印象を鑑賞する位置としては近すぎます。

 Ⅰでも述べましたが、今回の企画展は「印象、日の出」は来週末までしか鑑賞できません。個人的にはやはり、「サン=ラザール駅」よりも「印象派」という概念の元となった「印象、日の出」を鑑賞することをお勧めします。勿論、「どちらも見に行くよ、当たり前だろ」という人はそちらの方が良いでしょうが。

 

Ⅳ.「印象、日の出」以外の作品は?

 本企画展には90作品の展示がありますので、他にも見どころがあります。

 一つはモネ最晩年の作品である「バラの小道」。白内障の手術を受け既に視力がほとんどない中で描いたとは思えない、いやそうであるからこそ描けたかもしれないバラのドームには、彼の画家としての魂が描かれているといっても過言ではないでしょう。様々な色が織りなすバラの小道は、まるで幻想の世界に訪れたような感覚さえ覚えます。

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 二つ目が「オランダのチューリップ畑」。色とりどりのチューリップに加え、オランダの象徴である風車が加えられた絵です。この絵の空がまた実に素晴らしい。うっすらと雲掛かった空を、印象派独特の淡いタッチで描き出しており、オランダに広がるチューリップ畑の色彩をうまく引き出しています。

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 またモネの代表的な連作である「睡蓮」も何作か掲示されています。面白いと思ったのが、夕日がかった「赤い睡蓮」の絵。他の連作には見られないような独特の趣がありました。しかし、他の作品に関しては連作の中でもイマイチな作品が多いと感じます。個人的に今まで見た中で一番の睡蓮は直島地中美術館にある巨大なカンヴァスに描かれたものでしたが、今回の企画展の睡蓮はそれを上回るものではありませんでした。

 また企画展前半でモネやルノワールの描いた肖像画がありますが、イマイチですね。肖像画ならルネサンス期の作家の方が上手いと感じます。そこはまぁ、向き不向きの問題ではあると思いますが。

 

Ⅴ.総評

 総評としては「是非とも3連休中に訪れるべきマストスポット」です。駄目なら来週見てください。

 特に「印象、日の出」に関していえば日本にやってくるのは何と21年ぶりということ。このペースだと次に日本に来る頃には私はアラフィフになっています。もしかしたら死んでるかもしれません。それが今なら大人1,600円で、日本の上野で見ることが出来ます。僅か1,600円で「印象派」という美術界においてエポックメイキングな作品を直に鑑賞できるなら安いものです。因みにお隣の上野の森美術館では「魔法少女まどか☆マギカ」でお馴染の蒼樹うめの展示会がやってます。こっちは1,000円です。蒼樹うめに600円足せばクロード・モネの世界が観れるなんて、価格破壊もいいところですよ!

 個人的に日本人とモネは非常に相性がいいと思います。日本のアートも元来、モノを写実的に描くのではなく抽象的に(デフォルメして)描いてきました。またモネも日本の文化を愛し、作風に影響を受けたのはご存じの通りです。

 秋は芸術の秋と申します。この機会に是非とも印象派の世界に触れてみては如何でしょうか。

 

 以上、「マルモッテン・モネ展」の紹介でした。