雨の日の大人たちは

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(書評)恐るべきB級伝記ホラー「禍記」(著者:田中 啓文)

 恐ろしくB級臭溢れる作品。

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Ⅰ.あらすじ

オカルト雑誌の新米編集者、恭子はホラー小説の大家、待田から「禍記」という謎の古史古伝の存在を聞かされる。そこには、歴史の闇に葬られた人類誕生以前の世界のことが書かれているという。恭子はその書物に魅かれていき…。赤ん坊をすりかえる取りかえ鬼、孤島で崇められるひゃくめさま、そして、子供にしか見えないモミとは?神話、古代史、民間伝承を題材に、恐怖の真髄を描破した伝奇ホラー傑作集。

 

Ⅱ.ひたすらにB級臭

 映画において、B級映画というジャンルがある。

 もともと2本立て映画の内の添え物、昔のシングルでいうA面・B面の内のB面のような扱いだったのだが、現在では低予算の娯楽映画という位置付けがふさわしい。

 そんなB級映画のような雰囲気を持つのが、田中啓分の「禍記」だ。伝記をモチーフとした作品はグロテスクであり、スリリングである。難しい注釈はないし、深みのある情景描写もない、正直文章だってあまり上手くは無い。

 でも前述した映画のB級映画の様な、そんなエンタメに特化した伝記小説だ。

 

Ⅲ.どれも特徴がある短編集

 本作は5つの短編集と、それぞれの話を繋ぐ話(三津田信三でいいう、著者による推理の様な)で構成されている。

取りかえっ子

 念願の子供を授かった主人公。しかし、何故か子供は自分に懐いてくれない。そうする内、自分の実家に伝わる伝説を思い出すーー

 典型的洋風ホラーのような作品。

天使蝶

 蝶学者である主人公のものとに、今まで見た事のない蝶の翅が持ち込まれた。 どう考えても1メートル近くあると考える蝶に興奮を覚える主人公。しかしそれは、殺人事件に関わる証拠だと聞きーー

 突飛すぎる設定が素敵な一作。田中啓文は昔「かまいたちの夜 監獄島のわらべ歌」で伝記感溢れる「底蟲村編」を描いたのだが、それを思い出させる作品である。

怖い目

 盲目の恋人が失踪したことを知った主人公。主人公は、民俗学者でもある恋人が最後に調べていた<めんやみ島>に向かうがーー

 日本のオーソドックスな妖怪である「百目」をモチーフにした一作。読んでいくと体が痒くなる系のホラー。

妄執の獣

 研究員である主人公の前に現れる<モミ>という幻覚、しかしそれは息子だけでなく他の子供にも見えるらしい。しかし時間が経つにつれ、主人公も<モミ>の実在を感じ始めるーー

 こちらも何処かで見た事のある様なストーリー。途中から急にSF臭くなったと思えば、かたや源平盛衰記と時代の幅振りがすごい。

黄泉津鳥舟

 恒星間ワープが可能になった未来。ワープを行うには、一度黄泉の世界へ行く必要がある。主人公は、死んだ恋人にもう一度会うため、ワープ間の黄泉の世界へ足を踏み入れることを決めるがーー

 急にSFチックとなる最終作。ワープと黄泉の世界という組み合わせを、だれが思いつくのだろうか。色々とぶっ飛んでる内容が素敵。

 

Ⅳ.評価

 スナック菓子の様にサクサクと読めるホラーエンターテイメント作品。またどの作品も後味悪く、著者の趣味全開な感じが素敵である。

 良い意味でも悪い意味でも期待以上でもなく、期待以下でもないのだが、短編ということもあってか暇な時に度々読み返してしまう。案外こういうものの方が読む回数は多いのかもしれない。

(100書評チャレンジ:35/100記事)

 

禍記 (角川ホラー文庫)

禍記 (角川ホラー文庫)