雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

(書評)読んでいると心が痛くなる「イノセントデイズ」(著者:早見 和真)

 この絶望感には見覚えがある。

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 Ⅰ.あらすじ

 田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。日本推理作家協会賞受賞。(BOOKデータベースより)

 

Ⅱ.とても読むのが苦しい本

 読み始めた途端、あぁこれはきっと苦しい本だ、と思った。

 そういう本に出会うことは、稀にある。ひどく感情移入をしてしまい、その状況を変えたいと感じる。その様な本を読むことは、私にとって苦しく感じる。

 なぜかと言えば、きっと予測される結末が悲劇的だからなのだろう。

 これはミステリではあるが、決して犯人探しをする物語ではない。決められた結末に向け、その結末に至った道のりをなぞる物語である。だからこそ、全てがもう全て決まってしまっている様でもどかしい。

 

Ⅲ.既視感のある絶望感

 途中からこの物語には既視感を覚えざるを得ない。

 私が思い出すのは鬱映画として名高い「ダンサーインザダーク」だ。

ダンサー・イン・ザ・ダーク(Blu-ray Disc)

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 徐々に失明していく持病を持ったビョーク演じる主人公セルマは、同じ病を持つ息子に手術を受けさせようと尽力する。理解ある友人に囲まれ、徐々に視力が失われつつも幸せな時間を過ごすセルマ。しかし、ある事が切欠で徐々に歯車が狂い始めていく・・・。

 ビョーク演じる彼女もまた、イノセントデイズの主人公である田中幸乃と同じ様に、”イノセント”な存在である。

 どちらもただ、ひたむきに人生に向き合っていただけなのに。周りの環境の性で、少しの過ちのせいで、人生の歯車が狂っていく。本人は”イノセント”なままなのに、世界はそんな彼女たちを救ってはくれない。

 しかしながらダンサーインザダークに関しては、絶望の中に救済があった。しかしイノセントデイズの場合、その結末は本当に救済だったのか疑問は残る。

 

Ⅳ.一気読みを勧める秀作

 他レビューを見ると「狙いすぎ」という文面が散見される。

 小説的にあざとい、という感じは、確かにその通りかもしれない。ただそれを差し引いても、よく構成された小説だと感じる。すれ違う二人の登場人物の「正義」も読んでいて面白い。

 とにかく引き込まれる小説なので、この本を読む場合はまとまった時間を確保することをオススメする。

 (100書評チャレンジ:34/100記事)

 

イノセント・デイズ (新潮文庫)

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