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雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

【18/100冊】伝播する恐怖「ずうのめ人形」

 お、澤村の新作が出とるやんけ!

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 Ⅰ.「ぼぎわんが、来る」作者の新作

 日本ホラー小説大賞を受賞した「ぼぎわんが、来る」の作者・澤村伊智さんの新作「ずうのめ人形」が出ていました。

amenoh.hatenadiary.jp

  オカルト雑誌でアルバイトとして働く藤間は、校了間際に音信不通になったライターの湯水を探すために同僚の岩田とともに自宅を訪れる。そこで2人が発見したのは、顔中に“糸”のような引っかき傷をつけ、目を自ら抉り出した状態で死んでいる湯水の姿だった。1週間後、葬儀を終えた藤間は岩田からある原稿のコピーを押し付けられる。それは、亡くなった湯水の部屋に遺されていた手書きの原稿だった。湯水の死の原因はこれにあるはずだと言われた藤間は半信半疑でその原稿を読み始める。原稿に出てくる「ずうのめ人形」という不気味な都市伝説、それと対応するように藤間の周辺に現れる顔中を“糸”で覆われた喪服の人形。迫り来る怪異をふせぐため、藤間は湯水の後任ライターである野崎と彼の婚約者であり霊能力者の真琴に原稿のことを相談するが……。はたしてこの物語は、「ホンモノ」なのか。迫りくる恐怖を描くノンストップエンタテインメント!【電子書籍には、澤村伊智書き下ろしの短編を特別収録!】

 前回も述べましたが、所謂「洒落コワ」のような作品だった前作と比べ、果たしてどのように変わったのか、質を問われる2作目の登場です。

 

Ⅱ.ホラーミステリー?

 読了して思ったのが、「あれ、これ三津田信三の作品じゃないよね?」の一言。前回の直線的な「洒落コワ」的ホラーとは打って変わり、きちんと伏線を張りつつミステリー的な要素も含めた意欲作となっています。

 そういうので言うと、「どこの家にも怖いものはいる」の作者・三津田信三がトップに躍り出てくるのですが、三津田ほど「ミステリー色」は強くはなく、前作と同じくホラーエンターテイメント小説として非常に楽しめる一作となっています。

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 前回の粗削りというか、まんま「洒落コワ」だったのに比べ、今回はきちんと「小説」に落とし込んできたかな、というのが率直な感想です。

 

Ⅲ.ちょっと消化不良

 ネタばれになるかもしれませんが、「ぼぎわん」の世界と「ずうのめ」の世界は続いており、ぼぎわんで出てきたあの人達も登場し、物語に大きくかかわっていきます。しかしながらチートなお姉ちゃんは今回ほぼ登場しませんので、前回の「寺生まれのTさん」的なのは無いと思って構いません。

 今回残念だったのは、結局この現象が何故起こったのか、が全く分からなかったこと。呪いの原因は分かったのだが、それが何故発生したのかの描写が全くない。或る作品の言葉を借りるのであれば、モノノ怪の「形」「誠」「理」の内、形と誠は分かっているが理が分からないのである。これでは退魔の剣は抜けぬ。

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 ということで、若干の消化不良が残るものの、概ね全般としては良くできており、クライマックスのオチも唐突ではあるが納得はいく(ぜいたくを言えば、クライマックスのオチに関してはもう少し伏線が欲しかった)。

 また、「ぼぎわん」「ブギーマン」との掛け合いのようなちょっと面白い考察が今回は無かった。都市伝説の話に関しても、さんざん他のホラー作品でやられていることなので新鮮味がない。

 加えて、まだまだ文章力の粗さは目立つ。特に場面が変化する文が唐突すぎて分かり辛い(もしかしたら、オチに繋げる為の演出なのかもしれないが)。

 

Ⅳ.評価

 しかしながら、ぼぎわんで見られた様なエンターテイメントとしての完成度は高い。次へ次へと読み進みたくなる展開は、ぼぎわんよりも磨きが掛かったといってもいいかもしれない。

 とにかく、純粋なホラー作家としては非常に貴重な新人さんなので、これからもホラーを作り続けてほしい。というか、作り続けないと日本ホラーが死んでしまう。映像映えする内容なので、願わくば「ぼぎわん」と共に映像化することを願う。

 

 

ずうのめ人形

ずうのめ人形