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雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

【10/100冊】異質な世界観を持つ「粘膜人間」

100冊 ★★★★★ ホラー オカルト 書籍(小説)

 本を読んでいると、稀に最初の数ページで心をつかむ作品に出会う。

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 Ⅰ.あらすじ

「弟を殺そう」―身長195cm、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐太は、弟の殺害を計画した。だが圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるにいたり、村のはずれに棲むある男たちに依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか?そして待ち受ける凄絶な運命とは…。第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。
 
Ⅱ.冒頭の文章が素晴らしい
 私にとって粘膜人間はそういう作品の一つになった。エンタメ作品において、冒頭の掴みというのは重要なものなんじゃないかと思う。何せ小説というものは文章ばかりで絵も音楽もないから、助長なものはそれこそ良い睡眠薬と同じ意味を持つ。
 冒頭でハッとするようなシチュエーションを持ってくることで、いきなりスイッチをマックスに持っていくことは、300ページの活字を読む上で良い転換となる。
 そうしたことを踏まえれば、粘膜人間の出だしは完璧だ。身長195センチもある小学生の弟を殺そうと2人の兄弟が話し合うことから始まる。誰が殺すかというと、河童に頼むという。そこから森に住む脱走兵や、ロイド眼鏡という単語から舞台が第二次世界大戦前後の山村だということが分かる。非現実的な現実が冒頭数ページで怒涛の如く頭に流れ込んでいく感覚は、傑作の期待を膨らませるには十分だろう。
 
Ⅲ.狂気をはらんだ文章
 本作は三章仕立てになっているのだが、順を追うごとに現実から遠く離れていく。河童が登場する第一章に、死の幻想を見せる「髑髏」という薬が登場する二章、そしてもう生きているのか死んでいるのか定かではない三章と続いていく。作者はこの話を昔見た夢をモチーフにしたものだと語っているが、それも頷ける。理論的な文章や内容からとびぬけた部分が随所にあり、それが恐らく「夢の話」をモチーフにしているのだろうと思わせる。確かに、小さいころはこういった訳も分からない恐ろしい夢をよく見たものだ。
 その内容は狂気的でもあり、蠱惑的でもあり、魅力的でもある。
 
Ⅳ.総評
 エンタメ作品としてここまで楽しめる作品には早々出会わないだろう。一つの傑作の形として大成しているともいえる。でも人に勧めるにはちょっと内容が「アレ」すぎるのかもしれない。合う人には合うし、会わない人には合わないかもしれない。でも個人的にはドストライク。エログロ耐性があるなら読んでおいて損はない一作。
 
評価:★★★★★
粘膜人間 (角川ホラー文庫)

粘膜人間 (角川ホラー文庫)