雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

【8/100冊】新進気鋭作家の意欲作「鼻」

 2007年に日本ホラー小説大賞短編賞作品。作者は曽根圭介であり、同年に「沈底魚」で江戸川乱歩賞を受賞している新進気鋭の作家。

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 Ⅰ.あらすじ

 人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、二人の少女の行方不明事件を捜査している。そのさなか、因縁の男と再会することになるが…。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。大型新人の才気が迸る傑作短編集。

 

Ⅱ.どの短編も秀逸

 1話100ページ弱の短~中編の作品を3作掲載した本作。どの作品も独特の「シチュエーション」を持っており、短いながらグイグイとそのストーリーに引き込まれていきます。

 あらすじで紹介した日本ホラー小説大賞短編賞受賞作の「鼻」の他にも、人間の価値が株価として識別されるようになった世界を描く「暴落」、気が付いたら手錠をされて放置されていた男を描く「受難」。何だか世にも奇妙な物語で使われそうな、一癖のある話ばかりです。しかしながら3作全て「捨て話」が無く、続きが気になって仕方がない仕掛けをちりばめています。

 

Ⅲ.個人的に好きなのは「鼻」

 どれも素晴らしい作品ですが、やはり一番は日本ホラー小説大賞を受賞した「鼻」。「俺」と「私」が何処でどうやって交わるのか全く分からなかったのですが、まさかそこで、そんな風に話をクロスさせるとは、と驚いた作品。若干の叙述トリックを含んでいますので、映像化はちょっと難しいでしょう。

 他2作は甲乙つけがたいものがあるのですが、「受難」でしょうか。徐々に追いつめられていく主人公の描写が痛々しく、どうにか助かってくれと懇願せずにはいられません。そして他の登場する3人のなんと恨めしいことか、主人公に深く感情移入せざるを得ない作品です。

 「暴落」は今の世の中を風刺したような作品です。表面を見繕い、己の評価を上げる種に人間が働いている世界を描いています。そういえば、こうやってブログを書いたりするのも「充実している自分アピール」をする為に書くんだ、という考えがあるそうです。まさか僕も自分の株価に左右される人間なのだろうか・・・。

 

Ⅳ.総評

 ホラー小説の神髄は短編集にあるのかもしれません。少なくとも、他のサスペンスや純文学小説に比べ、ホラー小説の短編は出来のいいものが多い気がします。今後注目していきたい作家の一人となりました。

 

評価:★★★★☆

鼻 (角川ホラー文庫)

鼻 (角川ホラー文庫)