雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

【6/100冊】秀逸な短編集「霧が晴れた時」

 最近角川ホラー文庫ばかり読んでいますが、ホラーは長編より短編が面白いと感じます。そして短編集として非常に秀逸と感じる一冊が、小松左京著「霧が晴れた時」。

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 Ⅰ.一話10分強で読める短編集

 400ページの文庫本に、15話の短編作品が掲載されています。副題としてつけられているのが「自選恐怖小説集」というように、星新一、筒井康隆らと共にSF御三家と称される小松左京の自己ベストな作品集となっています。

 恐怖感を刺激されるというよりは、好奇心や懐疑心をくすぐられるような作品が多く掲載されています。読んでから知ったのですが、掲載された作品は60年代から70年代にかけて執筆された作品なんだとか。しかしながら古さは感じさせず、話に全く色褪せた様子を見せないのは流石小松左京というべきなのでしょうか。

 

Ⅱ.お勧めを探すのに苦労する

 15作品もあるのだから、どれか一番面白いのを教えてよ、と言われるとこれほど苦労するものもないでしょう。タイトルにある「霧の晴れた時」は、今ではメジャーにはなったマリーセレスト号をモチーフにした短編となっています。霧の中という境界線の曖昧な舞台で、親子の遭遇する非日常を描き出しています。「くだんのはは」は戦時下での少年を主人公に、下宿先で遭遇する怪異を描き出しています。「保護鳥」では外国の田舎を舞台に、親切そうでしかし裏のある村人が主人公を陥れます。

 どの作品も代えがたく、読む人によって好きな作品が全く異なるであろう作品集です。アマゾンのレビューでは、青年のもとに突然届いた召集令状をめぐる「召集令状」と、前述の「くだんのはは」が人気が高いようです。 

 

Ⅲ.久々に良い本と出合った

 小説の場合、短編集よりも長編の方が評価が高くなる傾向があります。短編集はどうしても作品間の出来不出来があり、作品集としての高評価につながることが少ないのですが、この短編集はどの作品もクオリティが高い。こんなに出来のいい短編集は、多くの作品を残した小松左京氏だからこそ作れた傑作集であろう。

 また30ページ弱という短さから、ちょっとした空き時間でも読むことが出来る。ポケットの中に潜ませておきたい一冊だ。文句なしの5ッ星。

 

評価:★★★★★

霧が晴れた時 (角川ホラー文庫―自選恐怖小説集)

霧が晴れた時 (角川ホラー文庫―自選恐怖小説集)