雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

(書評)新書「働く。なぜ?」

 タイトルからして、「こんな本読んでお前、なんか会社で嫌なことでもあったのか?」と問われそうな本ですが、安心してください平常運転です。

 新日鉄住金で人事を長年務めた中澤二郎著。

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 Ⅰ.ミスリードすぎるタイトルと帯文

 読み始めて直ぐに「おかしいな」と感じたのですが、これはおそらく内容を知ってでなくタイトルを見て購入した人にっては「詐欺じゃないか」と思えるような内容です。「働くことについて」というのは、私は一つの哲学的なテーマとしてとらえて、その解説として本書を購入したつもりだったのですが、内容は「日本式人事の素晴らしさ」を唱える本でした。ので、タイトルを着けるのであれば人事制度に関するタイトルを着けるべきであり、帯文でもそういった文章を書くべきです。恐らくこのタイトルを見て、日本の新卒教育の素晴らしさや、企業の人材育成方法に関してとやかく説教を頂くとは夢にも思わないでしょう。

 そういった意味ではこの本は非常に不義理な本であります。

 

Ⅱ.引用に次ぐ引用

 この本は非常に引用が多い。大げさに言って本の半分、まぁ四分の一は下らないだろうという引用の多さがページをめくるスピードを緩ませます。私の読書の価値観として、こういった新書というものはそれがどういう方向性であれ、自分の意見を最大限入れるのがその本の価値だと思うのですが、この本は筆者の思いを感じることが出来ません。

 Aという結論を導くのに、BCDEFG...と引用文を持ってきていますが、どんなに素晴らしくても所詮は引用文なので、趣旨がどうもぼやけていってしまう。結局この章では何が言いたかったのか、この文章のどれが結論なのか分かりません。何か「そんな感じだよね~」といったふんわりとした状況が永遠と続きます。

 

Ⅲ.評価

 結局タイトルにある「なぜ?」に関していえば、明確な答えが出ぬままに本は終わります。しいて結論とするのであれば「日本の新卒教育は正しいのだから、つべこべいわずに働け」というのが筆者の結論でしょうか。いや、違うとしてもそう感じざるをえない構成と文章です。

 優秀なサラリーマンが優秀な本を書くとは限らないということを身を持って教えて頂いた一冊なのではないでしょうか。

 

評価:★☆☆☆☆

 

(100書評チャレンジ:5/100冊)

 

働く。なぜ? (講談社現代新書)

働く。なぜ? (講談社現代新書)