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雨の日の大人たちは

「100食」「100本」「100冊」「100記事」をテーマに、ダウナーなアラサーが日記書いています。

【2/100冊】狂気と虚構と現実が混ざった「牛家」

 日本ホラー小説大賞佳作受賞作「牛家」。

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 Ⅰ.あらすじ

 ゴミ屋敷にはなんでもあるんだよ。ゴミ屋敷なめんな―特殊清掃員の俺は、ある一軒家の清掃をすることに、期間は2日。しかし、ゴミで溢れる屋内では、いてはならないモノが出現したり、掃除したはずが一晩で元に戻っていたり。しかも家では、病んだ妻が、赤子のビニール人形を食卓に並べる。これは夢か現実か―(Bookデータベースより抜粋)

 

Ⅱ.狂気って怖いよね

 昔クーロンズゲートというPlayStationのゲームがありました。ポリゴン明瞭期に作成された3DRPGなのですが、当初のポリゴンはリアルなのに人間の表情は無機質。今は亡き中国九龍城を舞台としたゲームは画面と演出も合間って、雑多感の中に狂気的な雰囲気を醸し出しており、当時小学生であった私に強烈なインパクトを残しました。(ソウジーサンウラナーイウラナーイ)

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 そのクーロンズゲートと同様、「牛家」雑多感の中に狂気を含んだ作品です。先日ご紹介した「夜市」「かにみそ」と同じく日本ホラー大賞受賞作品でありながら、どちらかといえばホラーというより「不思議なお話」であった二作と比べ、骨太の「ホラー作品」であるのが今作です。

amenoh.hatenadiary.jp

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Ⅲ.ゴミ屋敷という異空間

 物語はすべて、ゴミ屋敷という異空間に関わったこっとではじまります。それは2年前にゴミ屋敷の奥に佇む牛男を見たときに始まったのか、または特殊清掃員として家の中に立ち入ったときに始まったのか。

 ゴミ屋敷という、通常では立ち入ることのない異空間を表して、主人公の上司であるジンさんは「迷うな、迷ったら出れなくなる」と言います。それはゴミ屋敷のことを現しているのか、主人公が陥っている現状を現しているのか。異質なモノを感じながら清掃を行う主人公達は、ゴミ屋敷という迷宮を徐々に進んで行き、そして最後には捕われてしまいます。

 

Ⅳ.後半からの展開が恐怖
 後半はほぼ完全にゴミ屋敷に捕われた主人公らの行動を描いています。正直にいえばもうこの段階だと何がどうなっているのかわかりません。他のレビューでは「描写がわかりにくい」という指摘もありますが、私はあえてそういった描写をしているように感じられます。というのも、前半や同時収録されている瓶人を読んでも、彼の文章能力に劣るところは見受けられません。

 ということは、これは一種の演出だと私は思いました。ゴミ屋敷の雑多感の中で、次に何が起こるのか、いや今現実に起こっていることすらわからない状況で、主人公は恐怖と狂気に苛まれます。

 果たしてこれは現実か虚構か、どちら側がこちら側なのか、誰が誰なのか判らない。「迷ってしまった」。

 ストーリーはギリシア神話の一説であるミノタウルスの迷宮の話を引用して幕を閉じます。果たして彼はその後どうなったのか、想像を掻き立てられる作品であると同時に、想像するのが恐ろしくなる作品でした。

牛家 (角川ホラー文庫)

牛家 (角川ホラー文庫)