雨の日の大人たちは

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huluの新作「ルパン三世 バイバイリバティー危機一髪」を深読みしてみた【その2】

 【その1】からの続きです。

amenoh.hatenadiary.jp

 

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 Ⅳ.№1の能力

 №1の能力の一つに、他人の意識を乗っ取るというものがあります。劇中ではこの能力を用い、不二子を操ってイザベラをルパン一味の目の前から誘拐しました。

 恐らくは、他人の意識に憑依するような能力であると考えます。

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Ⅴ.イザベラの豹変

 イザベラは№1に捕えられた後、№3を取込み№1を殺して組織のトップの座につきます。しかしながら、劇中で彼女が組織のトップになる理由は全く語られていません。捕えられていきなり豹変し、化粧も変えて一躍「ボス」のような風格が出ます。そして、部下もそれに従順に従います。しかし、№3に刺された後また彼女は豹変します。今度はルパンを気使い、息子マイケルにやさしい言葉を掛ける良き母親へと変貌します。

 このような変貌ぶりは、№1が不二子に行った意識憑依に似たものがあります。実は№2は組織を裏切って逃亡したのではなく、№1に意識を憑依され、スーパーエッグを取り戻した後、また戻ってくるつもりだったのではないのでしょうか。

 では、それは何のためか。それは「コンピュータを起動すること」にあったのではないでしょうか。

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 そうであれば、コンピュータを起動した後イザベラが急に周りを気使い、息子に対し母性ある行動をとったのにも合点が行きます。何故ならそれ以前のイザベラはイザベラではなく№1であったからです。目的を達成したため、№1はイザベラの身体から離れていったため、最後の最後に彼女は意識を取り戻したのではないのでしょうか。

 

Ⅵ.コンピュータで世界を書き換えるって?
 舞台は情報化社会により、ルパンの行動さえも予測できる世界となっています。過度に発展した科学技術は、SF界の権威アーサー・C・クラークの言葉を借りれば「魔術と区別がつかない」域まで発達したのではないでしょうか。

 そこで登場する「コンピュータウィルスを操り、意のままに情報を改変する」ウィルスですが、果たしてこれが改変するのは本当にコンピュータの中だけなのでしょうか。実は「現実世界をも、意のままに改変できるシステム」ではないのでしょうか。

 それを裏付けるのが、立ち上げ時にイザベラが語った言葉にあります。

 

Ⅶ.5つの映像が現実のものになる

 イザベラがコンピュータを起動する際に、5つの映像が流れます。「男性に刺される女性」「ギロチンで首を切られる男」「真っ二つになるプルーン」「大きな爆発」「荒れた大海原」ですが、これらはすべて劇中で現実のものになるか、それを暗示する行動が発生します。
「男性に刺される女性」…№3に刺されるイザベラのことです。
「ギロチンで首を切られる男性」…首は切られませんが、五右衛門に切られ結果的に命を落とします。
「真っ二つになるプルーン」…五右衛門によって切られたスーパーエッグの事と推察します。
「大きな爆発」…核爆弾による爆発を暗示しています。
「荒れた大海原」…核爆弾により死滅する世界を、旧約聖書の一節「ノアの箱舟」の洪水をなぞったものと推察します。

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 このように、暗示した画像が全て現実に起こる、または起きようとしました。核爆弾はマイケルに止められたものの、あと僅かなところで世界は核の火の海に包まれるところでした。つまり、コンピュータ起動以後に起きたことに関しては、全てこのウィルスによって書き換えられた事象だと考えることが出来ます。

 

Ⅷ.アマデウスレクイエムとは

 また、同じく起動時に「アマデウスレクイエムを奏でよ」とイザベラが言葉を発します。

 これは恐らく、ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト、つまりモーツァルトのレクイエムの事をさしていると考えられます。このモーツァルトの作ったレクイエムには曰くがあります。

 このレクイエムは、モーツァルトが自分の死に際して、自らの為に書いた曲ということです。では誰のために奏でるのか。バイバイリバティーでこの時点で死亡したキャラクターは№1と、ルースターです。ここでは№1と考えるのがしっくりくるでしょう。

 №1は自身をモーツァルトに例え、自らの為に奏でろとイザベルの口を借りて唱えるのです。

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Ⅸ.では№1の目的は何だったのか

 №1の目的は「高齢化した自分と、影響力に陰りの出てきた組織を、世界を改変することで生きながらえらせること」にあったのではないでしょうか。№1は123歳と高齢であり、№3にも自らの死に関して話していたように、自らの死期を悟っていたのではないでしょうか。しかしながら№1はそれを受け入れず、現状を打破しようと現実を書き換えるシステムを№2に作らせた。だが、そのカギであるスーパーエッグをルースターに盗まれたことで計画が狂ってしまう。

 そこで、一計を案じ今回の騒動を引き起こした。そして計画は成功し、イザベルにより世界を改変させた。新たな世界を作ることで、世界は№1が生きながらえた世界と、死んだ世界の二つの並行世界に分かれてしまった。

 そして最後のシーン。ルパンはイザベルのシステムを再構築しようと試みた結果、中途半端にシステムが起動したため影響として地震が発生します。また同時に、並行世界に生きている№1の画像と、並行世界の自分の姿がパソコン表示されて映画はエンディングを迎えます。

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 そう、この映画はルパン三世という娯楽映画の皮をかぶった、とんでもないサイバーパンクな映画なのです。

 

Ⅹ.総評

 と、バイバイリバティーの深読みをしてみたのですが、結構無理がある読みが多々ありますね。しかしながら、こう結論付けるにはもう一つ理由があります。

 それは、この作品が日本テレビに制作が戻った記念すべき1号作品だということです。以前のシリーズとは決別して、これは新たなルパン三世として位置付けるにあたり、過去の作品とは別物(並行世界の話)としたい裏の意図が制作側にあったのではないでしょうか。
 残念なことは、これを語ろうにも映画自体が古すぎて、他の方の意見と比較しようにもロクな考察をしているサイトがないということです。本当はただ急ごしらえだったのでストーリーが滅茶苦茶なだけかもしれません。

 しかしながら、脚本は以降のルパンシリーズを引き受けた出崎統です。私には何か意味があってこのようにしたとしか考えられないのです。だってそっちの方が面白いじゃないですか。映画好きとしては。

 

 以上、「ルパン三世 バイバイリバティー危機一髪」の考察でした。